第14章 神野くんとわたし

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この人にどう思われても平気ってことなのかな。 「この子は壁があるっていうか。よく知らない人にはなかなか気を許さない小動物みたいな性格なんだよ。だから初対面からしばらくは敬語の向こうにじっと身を隠して様子を伺ってるんだ。俺たちとの時もそうだったもんな?」 「えーと、…そうです」 調子が狂って高松くんに敬語で返してしまった。そういえば、あの日部屋に向かって歩いてる時になんでタメなのに敬語?って言われたな。リュウとの時もそうだったし、確かにそういう癖なのかも。 「そのうち警戒心が解けたら自然な話し方になるよ。それまではそっとしておいてやって。…俺らとは意外とそんなに長くは続かなかったよな、敬語」 「あぁ…、それは。まあね」 思い返してももうそれは部屋で飲み始めたくらいまでしか。だって、そのあとはそれどころじゃなかった。 ああなっちゃったらもう、敬語も警戒心もないよ。 『神野くん』は感情の見えづらい真っ黒な目でじっとわたしを見た。 「人見知りなんだ」 「えーと、コミュ障です」 笑いに紛らわせようと自嘲気味に答えると、彼はまっすぐな視線を向けたままで応じた。 「僕もだ」 「あー…、なるほど」     
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