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シカを仕留めたのは、初めてだった。
ぐんと引いた弦(つる)から矢が放たれると、獲物の肉体を一瞬にして射抜く。
動物は肉体をぴんと引きつらせ、その場に大きく倒れた。
それまで、時を刻んで動いていた生命の砂時計が、瞬間、途絶えてしまったのだ。
シカは震えている。
苦しいのだろうか。
たとえそうだとしたら、自分の技量不足のせいだ。
だからあのシカは、死ぬ間際に痛みと苦痛を味わうことになったのだ。
(すまない……)
緑惺は膝をつき、震えたシカの頭をやさしく撫でた。
前を歩く父が口を開く。
獲物を射抜いた息子の成果を褒めるのでもなく、悪い部分を正そうというのでもなく、ただゆっくりと呟くように。
「精進せねば、ならん」
父の背中はいつも冷たく、いつも遠い。
そしていつも、自分を認めてくれようとはしない。
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