プロローグ

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槇は研究室の椅子に座って、ばらばらに散らばっている人骨の破片を見た。 これは頭蓋骨部分である。 遺跡や人骨の発掘場所で綺麗に土の除去作業を行った後、首都圏の博物館内部の研究所に運ばれ、そこで分けられたものが槇の元へと届く。 それを緻密に組み立て、かつての姿形へと戻すのだ。 彼らは人類の祖先。 それらをひもといていくと、現代人の価値観や生活の原点が、見えてくることも多い。 槇は一呼吸すると、それに触れた。 冷たい。しかし、壮大なる息吹が身体を通り抜ける感覚がする。 彼の手に撫でられた、それ。 それはーー。 縄文時代の人骨だった。
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