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人影のない駅のホームで平太は途方にくれていた。赤いテールランプとともに最終電車が去っていく。
気の早い駅員がホームには誰もいないとおもったのか、待合室の電気を落とす。どんなに待っても、明日の朝の始発まで電車は来ない。
また、だ。
ローカル線を乗り継いで、日に数本しか電車が止まらない田舎の駅に降り立った時から、こんな結末を頭のどこかで予想していた。
今日を振り返ってみる。
昼過ぎにこの駅に着いてタクシーに乗って、用をすませた。なんとか最終電車に間に合うようにタクシーを手配して駅に着いた。
季節外れの強風のせいで電線が切れたとかで、電車は不通になっていた。乗客は平太の他に数人しかいない。改札には「しばらく復旧の見込みはありません」とちぎれかけた張り紙が壁に貼り付く。
どうも腹がへるとおもったら、家を出る前にブランチを食べたきりだ。駅前に一軒だけある食堂で時間をつぶした。
一時間ほど経って駅に戻ると、「お急ぎのかたは――」とアナウンスが流れている。いつのまにか復旧したのだと知り、ホームに走った。最終電車とあって必死で階段を駈け上がったけれど、運動が苦手な平太は足があがらず走れない。
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