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城内もまた、かつて暮らしたその景色と何も変わらない情景を残していた。
いや、実際には埃や砂に塗れ、今はとても人の住めるような状態ではないかもしれない。しかし俺の良心の呵責がそう見せるのか、城は当時の美しい外観のままだった。
大きな窓から月明かりが漏れる。その光に照らされて、中央の大広間が姿を現わす。赤の絨毯と、隅に並べられた金の椅子。奥の玉座の間まで燭台が並べられ、煌煌と蝋燭の火が灯っている。淡く幻想的な、幻の空間。
……いや、違う。
この明かりは、幻ではなく……。
「何しに来た?」
その瞬間、何の前触れも無く、三人の近衛が俺を取り囲んだ。
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