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第1章
プロローグ
秋の緩やかな午後の日差しが、会議室を照らす。
会議室の中は日差しとは裏腹に、険悪なムードだ。
二十三歳になってもまともな生活をせず、伴侶を得ようともしない皇太子である
自分に対して、業を煮やした大臣達は伴侶選びの会議を立ち上げた。
自分を取り巻く大臣達を、蒼い瞳で一人一人睨め付ける。
鋭く鶴の一声を発した。
「僕の伴侶選びは次回行われる花(はな)の顔(かんばせ)祭(まつり)で選ぶことに
しました。伴侶として選ばれる花の顔として参加します」
この声に集まった一同がざわついた。
皇太子が伴侶選びの祭に参加するのは前代未聞だからだ。
大臣達が驚く様に、顔を驕慢にそびやかせると短く切った金の髪が揺れる。
「クライド殿下! 伴侶として選ばれる側の花(はな)の顔(かんばせ)として
参加する貴族もございますが、国政を左右する皇太子殿下御自ら参加するという前例は
有りません!」
金切り声で内務大臣が叫ぶ。
冷たい視線で内大臣を見下げた。
「僕は良いと思っています。祭には体力・知性、バランスのとれた挑戦者が
応募してきます。勝ち上がった人間こそが僕の伴侶にふさわしい」
あきれたように国交大臣がため息をついて発言する。
「国と国のバランスはどうなさるおつもりですか?」
そう言われて軽く眉を上げる。
ふふんと小馬鹿にしたように返した。
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