5:トンデモ発言

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 階段を慎重に見つめ降りながら、僕は遠い昔、田舎の友達に言われた事を思いだしていた。 『東京は気をつけなきゃにゃあ。いろんな人がいおるき。とくにテレビ局らぁ怖かよ。薬やっちゅうたり、男ん好きらぁてうじゃうじゃおるんやか? みっちゃん細うてこんまいき一発でカマ掘られちゃうで』  別の意味でゾゾゾッと背筋が震えあがる。  ち、違うよね? ……アレはきっと悪りぃてんごう。そうに決まっちゅうて。  あまりのショッキングな出来事に、恐怖が総転換されてしまって、すっかり幽霊騒ぎどころではなくなっていた。  屋敷を出たら、足の先だけ見てツカツカ速足で歩き、やっぱり何も見ないで黙々と三脚を開き、録画ボタンを押し、セットした。やるべきことを終え、早々に二階のキャンプへ戻る。  ときめきじゃない方のドキドキを感じながら二階へ戻ると、御影さんは寝袋にくるまりすでに眠っていた。ホッと胸を撫で下ろす。  そうだよね。さっきは思わずお国言葉になっちゃったけど。嫌になるなぁ。あんな冗談を真に受けるなんて。だいたい三週間女の人ナシなんて、テレビ局じゃなくったってザラな話なんだから。そもそもいくら御影さんだって、穴ならなんでもいいって、節操がなさ過ぎる。まだ自慰でもした方がいいに決まってるんだから。  僕も自分の寝袋に包まり、目を閉じた。  ちゃんと寝ておかないと。また明日も御影さんに振り回されてしまうんだから。
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