2:御籠島

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「この島では、未だに土葬なんですね」  御影さんが運転手に色々話を聞いている。 「その洋館は集落からだいぶ離れているんですか?」  運転手の話では、その洋館は散策コースの丁度頂上付近に建っているのだという。しかも車ではいけないらしい。ゆうに三十分は歩かないと、洋館へは辿り着けないのだという。  歩きだなんて、なんでだよ。怖すぎるよ。だって逃げ場もないし、なにより身が丸出しだなんて危険すぎる。縮みあがる心臓に体まで小さくなる。 「みつき、流れる風景撮影しとけよ」 「は、はい」  運転手の後頭部ばかりを映していたハンディカメラを窓の外へ向けイイ画を探した。まずは島をグルッと一周するらしい。高台になると、左手に海が見えてきた。曇ってるけど、うっすら青い海。晴天なら素晴らしい眺めだろうに。でも、この企画的にはこのくらいの方が神秘的で撮影日和といえるのかもしれない。 「……で、商店は集落に三つしかないと」 「そう。あ、水はある。湧水が飲めるようになっとるから。途中で汲んでいけばいい」 「それは助かります。洋館の管理人で、神山次郎さんという方と十時に待ち合わせをしているのですが、ご存知ですか?」  御影さんの質問に「うんうん」と大きく頷いて運転手は言った。 「村の人口は三百ちょっとだから、みんな知り合いさ」 「高橋さんは白い女の霊を見たことがあるのですか?」  御影さんの質問に愛想よく笑っていた運転手が急に黙り込んでしまった。 「高橋さん? あるんですね?」  御影さんが再度尋ねると、「むーん」と唸る。よっぽど口にしたくないらしい。そう言う感じ、なんだかすごく嫌だ。 「すまね。そこら辺の話は、神山さんに聞いてくれ。他の怖い話なら沢山知っとるから」  他の怖い話?  御影さんがバックミラー越しにチラッと僕を見てまた運転手を見た。御影さんも運転手の言葉に何か気付いたみたいだ。 「そうですか。分かりました。では、他の島にまつわる話を聞かせてください」
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