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「でも、そんなにどうやって持って行くんです? 荷車があるわけでもないし」
御影さんはリュックから軍手を取り出すと両手にはめ、頑丈そうな作りのエコバッグみたいなものを二つ出した。そこへ水の入ったペットボトルどんどん入れていく。
「お前に持てとは言わん」
冷たい声でリュックを背負い、エコバッグの持ち手を肩に掛ける。もう片方の肩にも。そしてそのまま歩き出す。逞し過ぎる。どこぞの武道の修行みたいだ。僕は完全に引き攣った顔を隠せなくなっていた。
御影さんは、ズシリと重そうな荷物を肩に食い込ませながら歩いて行く。いくらなんでもひとりじゃ無理でしょ。
すごく億劫だ。でも、放ってもおけない。先を行く御影さんに駆け寄り、志願した。
「一つ持ちます。コッチと交換しましょう」
御影さんは僕の持っているスーパーの袋を一つヒョイと持つと言った。
「森、歩きながら撮影しろ」
「え!? いやいや、ひとりで無茶ですって」
「手ブレすんなよ」
御影さんはそう言って、先へズンズン歩いて行ってしまう。僕の言うことなんて聞きやしない。意地っ張りというかなんというか。結局僕の荷物まで持たせてしまっただけに終わってしまった。
僕は気付かれないように溜息を吐き、例の如く言いつけ通りカメラを回した。
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