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「はい、すみません。いただきます」
リュックのポケットを探ったら防虫スプレー、鎮痛剤、胃腸薬、バンドエイド、酔い止めが入っている。リュックの中には水のペットボトルまでちゃんとある。
「お水も、もらっていいですか?」
「……ったく、小学生の遠足じゃねーんだから、一から十まで言われなくても考えりゃ分かるだろ。これだからゆとりは」
ゆとりは御影さんの常套句だけど、僕と御影さんは実は二歳しか違わない。御影さんもギリゆとり組のはずなんだけど、そんなことは御影さんに到底言えるわけもない。
クリームパンを牛乳で流し込んだ御影さんはノートを閉じると大きなリュックの外ポケットへ入れた。
「寝る」
ぶっきらぼうに言い放ち、御影さんは備え付けのオレンジのマットに寝転び、オレンジの毛布を掛け僕に背中を向けて寝てしまった。
なんなんだこの人は。わかっていたことだけど……。
傍若無人な御影さんをむくれっ面で睨みつけた。睨みつけたままずるずると溶けるように床に崩れて僕は意識を手放した。
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