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フェリーから降りると、辺りは薄暗い青の世界が広がっていた。空も、海も、山々も全て青。その中でところどころオレンジの街の明かりが灯っている。幻想的で綺麗だけど、すきっ腹と冷たい空気、そしてこの青の世界はひもじさをより倍増させる。
コンビニ……急募……。
幻想的な風景よりも、僕はコンビニらしき看板が光ってないかと視線を動かした。
御籠島は人口たった三百人程度。それに対し、年間に訪れる観光客はなんと七千人という。おもいっきり観光で潤っている島なのだという。
フェリーの中にあった冊子やポスターにもあったけど、海の中でイルカと撮影ができたり、触れ合うことができたり、マリンスポーツもさかんで、夏は島全体が観光地としてすごく盛り上がっているみたい。
でも今は五月。寒いし、まだちょっと時期的に早い。だから観光客もまばらなのだろう。観光客相手でコンビニは必須だろうと踏んでたけど、お馴染の看板はどこにも見当たらない。離島だからないんだろうか。
「おい! みつき!」
大きな声で名前を呼ばれハッとする。御影さんから名前で呼ばれたのは初めてだった。いつもは僕を「おい」か「メガネ」としか呼ばない。てっきりペーペーな僕の名前なんて覚える気が無いんだろうと諦めてた。
名前は知っていたみたいだけど、御影さんはやっぱりイライラした顔で僕を見ていた。眼力が強いというか、目つきが悪いというか、無駄に整った顔で睨まれるから余計に冷たく見えて怖い。
性格が顔に出てるって言うの? 映画とかで主役をいじめる敵役にいそうなんだよ。なんならそういったの集団のトップかもしれない。冷酷、冷淡。とにかく弱い者イジメが平気でできちゃうタイプ。
僕のすごく苦手なタイプだ。
いくら顔やスタイルが整っていようとも、僕の憧れるキラキラ様達とはえらく違う。片鱗すらない。
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