桃太郎なう

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桃太郎なう

 どうも暇になるとTwitterを開いてタイムラインを確認してしまう。それはどうしようもない癖みたいなもので直そうとしても直せるものではなかった。日常的な出来事でも、特異な出来事でも、ネットワークの世界に一四〇文字以内の言葉に託しては羽ばたかせていた。  だから、今この状況を僕は言葉に託し羽ばたかせるべきなのは明白だった。近所の土手を散歩していたら、川上から人間大の桃が流れてきた。しかも入れと言わんばかりにぱっくり開いている。開いているものに入りたくなるのは何故だろう。あれと感覚が似ている。ボタンがあると押してみたくなるとか、山があるから登りたくなるとか。少し違うか。とりあえず今この状況を整理するために写真を撮ろう。運がいいことに川の流れは緩やかだ。ほうら、撮ってごらんと桃も言っているようだ。愛用のスマホでカメラのアプリを起動させる。このカメラは僕の家でも最高峰の画素数を誇る。かしゃりと不自然なほど大きな音が誰もいない土手に響く。どう見ても桃だ。ピンク色のうすぼやけた色は、どんぶらこという効果音つきで流れている。勿論この効果音は僕の脳内のみで再生されている。     
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