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私もそれに習いドアを開け放って、ストッパーを掛けた...はず...。
少しだけ不安になった私は、とりあえずドアを確認する為に、棚の影から出ようとした時だった。
「―伊橋。」
届く声の大きさから扉の近くから発せられているようで、まさかこんな場所にこの声の主が来るとは思ってもいなかった私は、驚いて思わず抱えていた資料のファイルを落としてしまった。
ファイルの落ちた音で、私の居場所が分かったのか、その声の主が近付いて来るのが分かった。――
「伊橋?.....何してるんだ?」
「あっ。すみません。急に課長の声が聞こえて、驚いてファイルを落としてしまったんです。」
落としたファイルを慌てて拾おうと屈んだところで、課長に声を掛けられた私は、動揺していたのか思わず本音を漏らしてしまった。
しまった!そう思った時には既に遅く、私の口から出た言葉は、課長の耳に確実に届いてしまった事に私は身を強ばらし、先程発した言葉を誤魔化すように矢継ぎ早に言葉を繋げた。
「―資料急がれてたんですか?すみません。最後の一つが見つからなくて.....、」
それなのに、その誤魔化すための言葉も、結局更に自分を追い込む様な言葉しか出ず、更に私は焦ってしまった。
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