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でもこれ以上、口を開けば余計にボロが出てしまうかも。そう思い、無駄な弁解はよそうと口を閉じ、課長からのお叱りの言葉を待った。
しかし、怒られる事に覚悟を決めた時だった。
「...驚かせたなら...すまない。」
課長から予想外の言葉が出て、思わず伏せていた顔を上げた。
だけど、その顔を見て少し後悔した。
課長の顔は〝すまない。〟とは言ったものの、眉間の皺は何時もより深く、表情も険しい物だった。
絶対に私の言葉で気分を悪くしたに違いない。そう思った私は、直ぐに課長から視線を外し床を見つめた。
「い、いえ。そんな事は...、元はと言えば、課長が自ら取りに来られるほど、資料を探すのに手間取った私が悪いので...。」
怯えと緊張とで、自分の声が震えているのに気付いて、この震えが課長に気付かれなければ良いな。と思いながらいると、
「はぁ~。」
それに気取られたのか、それとも、さっきの言葉が言い訳じみて苛ついたのか、課長の口から大きな溜息が漏れる音が聞こえ、私の身体は更に縮こまった気がした。
苦手な人で、更に異性と、密室で二人きり。おまけに、相手は間違いなく憤慨している。
そんな状況で、私の、恐怖による緊張のピークが直ぐそこまで差し迫って来ていた。
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