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就業時間の少し前。
私は、静まり返った小会議室の中で茫然と立ち尽くし、ただ一点を見つめる事しか出来ずにいた。
それもその筈。
今さっき起こった出来事...否、ある人物から一方的に伝えられた衝撃的な発言が信じられず、しかも、それは私に拒否権すらも与えられる事も無く、既に決定事項として告げられただけに、その衝撃は私の脳の活動を一瞬で停止させる程のものだったからだ。
今さっきまでの状況を脳内でリプレイしようにも、今の私の脳はそれを拒否し、問題発言が起こる前で強制停止して件の人物が去る辺りまで映像を飛ばしてしまう。
もう、どれくらい呆けていただろうか?
段々と時間が経つにつれて、先程までの出来事が夢だったかのようにさえ感じてしまうが、手の中にある白封筒が事実であったことを知らしめている。
『今週中に必要書類を揃えて、それに記入しておけ。』
中に入っている用紙を思い出すと同時に、あの人の私を見下ろす冷めた視線と、何の感情もない冷たい声が頭の中を掠め、嫌でも逃げていた現実に引き戻され、私は立つ力を無くしその場にしゃがみ込んだ。
「...冗...談じゃ...ないわよ...。なんで...私が...あんな人と.....。.......なんて.....。」
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