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ただ、確かに嫌だと思う事も多々あるが、それはどんな良い環境で仕事をしていようが、当然の様に出てくる愚痴と一緒な程度の物であって、別に篠藤課長を毛嫌いしている訳ではない。
実際に、上司としての働きぶりは素晴らしいと思うし、現に、今さっき受け取ったFAXする書類だって、私がわざわざ聞かなくてもいい様に、送る相手や枚数なんかをきちんと付箋に指示を書いていたりと、気配りの細やかさは見習いたいとさえ思う一面でもあり、尊敬はしている。
ただ、異性として有りか無しか問われれば、矢張り〝無し〟だ。
確かに、長身でスタイルも良くて、美男で仕事も出来る。完璧を絵に描いたような人でも、冷たい人と云うだけで私の理想像から外れてしまう。
それなら、少し彼よりも容姿が劣っていても、常に朗らかで、私の我儘も笑って受け入れてくれるような優しい人が良い。
そう思う私は周りとは異なり、課長を特別、異性として意識する様な事も、況してやお近づきになりたいとは思っていないし、寧ろ、プライベートでは一切関わることすら無いだろう。
そう、プライベートでは一切関わることなんて、万に...否、億.....、1ミクロンもないと思っていた。
あの日までは。―――
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