1:鬼上司/突然の呼び出し/婚姻届

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    「課長、FAX終わりました。」  FAXを送り終えた書類を、課長のデスクに持って行くと、篠藤課長は仕事の手を止めることなく、 「あぁ。そこに置いとけ。」  とデスクの脇の方に顎を抉りながら言われ、私は何時も通りにデスクの邪魔にならない所に、それを置くと自分の席に戻って業務の続きを再開した。―――  〝鬼課長〟課長のこの裏の別名はこの態度が一番の要因だ。    確かに仕事には厳しいが、それは他者だけじゃ無く自分にも厳しい。部下に責任を擦り付けたり、理不尽に怒ったり、そういう事は一切しないし、若い男性社員には人望もある。素晴らしい上司の筈なのに。  業務中は誰にでも素っ気なく、女子社員には常に素っ気ないけど...、それに、いつも眉間に皺を寄せ、長身なのもあるけど、常に冷めた視線で人を見下ろし、威圧的な物言いをする事から、自然と皆から影でそう呼ばれる様になった。  そして、もう一つ。この渾名紛いな呼び方をされる様になった逸話がある。――― 「―お疲れ~。」 「お疲れ。」  ランチタイム。社員食堂で昼食を摂ってると、間延びした声で、同期で同じ部署の小夜こと、芳原 小夜子(よしはら さよこ)が声を掛けてきた。 「ねぇ、聞いた?」  当然の様に向い側に腰を下ろしながら、小夜はいきなり意味不明な質問を投げかけてきた。 「ん?聞いたって何を?」  A定食の唐揚げを箸で詰めみながら聞くと、小夜は、待ってました!とばかりに、内緒話をする様に声を潜めた。
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