1:鬼上司/突然の呼び出し/婚姻届

7/44
前へ
/557ページ
次へ
 私が全てを言い終える前に、小夜が反論する。  小夜の言う、〝名台詞〟とは、過去、課長に振られた人が言われたらしい、台詞。 『お前は会社に何をしに来てるんだ?そんな事に現を抜かさず、業務を全うしろ。遊び感覚で会社に来られてても迷惑なだけだ。』  確かに、せっかく勇気を振り絞って告白しても、こんな事を言われれば、次の日には〝鬼課長〟と言われてても仕方ないのかもしれないけど。  それでも課長の言うことには一理ある気もしないでもない。  だからといって、課長にそう云った興味のない私は、後輩思いの小夜を刺激しない様に、同意した。――― ―――――― ―――― ―――       午後。小夜と一緒にフロアに戻ると、昼休み話題に上がった課長が、既に仕事を始めていた。  『そんな事に現を抜かさず、業務を全うしろ。』  私は、そんな課長を観ながら、その台詞を思い出した。  こんな姿を目にすれば、課長の言いそうな言葉である。 「お疲れです。」 「ん、あぁ。...あ、伊橋。さっきの仕事片付いたら、これ今日中にコピーしてファイルしとけ。」 「...分かりました。」  席へ座る前に、課長に声を掛けると、また新たな仕事を追加された。  それでも、私の仕事の役割上、断れず書類の束を受け取った。     
/557ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4633人が本棚に入れています
本棚に追加