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「……有難う御座います。せめて天使の様に優しい束砂さんには、最高の美味を授けましょう!」
タコの体が一層輝きを増す。
そして……
……
……
……イカリングが三つ、空から降って来た。
イカリングはそれぞれ、束砂さんの宝物である『めうのぬいぐるみ』『めうのハンカチ』『めうの弁当箱』に降臨した。
「キャア―――!!! 私の宝物が!!!」
「ハッピーバースデー!」
「どこがハッピーなのですか!?」
「ぬいぐるみやハンカチのお蔭で、油が飛び散りませんでしたよ。それに、弁当のおかずが一品増えました。最高ですね」
私は神の体を両手で鷲掴みにした。
「有難う御座います。でも……いくら神様でも、調子に乗り過ぎじゃないですか? やって良い事と悪い事の区別がつかないのですか?」
「逆鱗に触れた!? ちょっ、まっ、話し合いましょう!」
「逃がさない……そうね。タコデレラのぬいぐるみが手に入らないのなら、神様に代わってもらうしかないわね。さあ、ドレスを着ましょう。ウフフフフ……」
「目が座ってる! あっ、あっ、あなたの願いは叶えました! では、さようなら」
……
……
こうして、イカリングを部屋中に残して神は消えた。
「逃げられた……」
イカリングを口に運ぶと、やたら美味くて余計に悲しくなる。
スマホを手に取って覗くと、多くのクリエーターからお祝いのメッセージが届いていた。
癒される。
「みんな優しいな……あっ!?」
大変なことに気付いた。
「神様……もしかして、げた様のところにも……」
……
……
……逃がしませんわ!
めうのぬいぐるみを抱き締め、私は無我夢中で駆け出した。
【HAPPY BIRTHDAY!】
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