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「ゆき、降らないかなぁ」  すぅーっと大きく息を吸い込んだ園崎雪美は、白い吐息とともにそんな言葉をこぼした。 「降るわけないって、まだ十二月なんだからさ」  雪国でもあるわけでもなし、東京の都心部でこの時期にそれを期待するのは贅沢じゃないか。香坂尚人はそんな事を思っていた。  空気は乾いていて、風はときたま強くはなるものの、雪どころか雨すら降りそうもない空だった。 「せっかくのクリスマスなのにね」  彼女はかわいく微笑んで彼の腕にからみつく。 「ホワイトクリスマスを期待するなら、雪国に行くしかないね。オレは仕事があるから、東京は離れられないけどさ」 「雪だけ見られても意味ないの。ナオトがいなきゃつまんないよ」  わがままだなと思いながらも、そんな雪美の言葉を嬉しく思う尚人であった。それでも言葉は意地悪くなってしまう。 「寒波でもこない限りここでホワイトクリスマスを迎えるのは難しいよな。それこそ奇跡が起きるようなものかも」  雪美は尚人の腕からひょいと離れ、両手を空へと掲げる。 「あーあ、奇跡でも起きないかな」 「そんな簡単に奇跡が起きてたまるか」  ぽかりと雪美は尚人の頭を軽く殴った。     
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