■一歩を踏み出すためのプロローグ ~ White Rabbit

1/12
127人が本棚に入れています
本棚に追加
/964ページ

■一歩を踏み出すためのプロローグ ~ White Rabbit

“飛び降り自殺というのは、極めて優れた自殺方法である”  そんな風にある人が薦めていた。  落下中に気を失うので痛みと恐怖がなく、致死度も高くて麻薬のように気持ちいいとの噂だ。どうやって死人からインタビューしたかは謎だけど。  だが、実際に自殺を試みた人の体験談によると壮絶なものがあるようだ。  落ちる最中に死への恐怖が甦ったり、風圧が妙に苦しかったり(後にそよ風さえトラウマとなる)、落ちた後は意外と生存率が高く、痛みよりも死ねなかった事への後悔が襲ってくるという。  入院後は地獄の日々だそうだ。  身体を動かすどころか排泄さえもまともにできなくなり、ベッドのシーツ交換ですら体中に激痛が走るらしい。さらに、ケガの後遺症で一生苦しむ事になる。 「死ねるのかな?」  僕は真下を見下ろし、そんな想像を働かせた。この高校の屋上から地上までは約十二メートルくらいだろう。アスファルトに叩きつけられれば無事では済むまい。  だが、世の中には高層ビルの三十九階から飛び降りても生き残った人もいるのだ。この学校の屋上程度では、生き残る確率の方が高いだろう。     
/964ページ

最初のコメントを投稿しよう!