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俺は会社帰りに立ち寄った花屋で、柄にもなく大きな花束を買った。
バラとカスミ草、そしてカラーと呼ばれる筒のような花で出来た、かなり立派なそれを幾度も持ち方を変えて家路を急ぐ。
今日は四度目の結婚記念日だ。
正直、結婚記念日に花を贈るのも初めてなら、一度もプレゼントはおろか祝ったことすらなかった。
同棲を二年。
そして、結婚して四年。
ややマンネリ気味の関係。
マンネリと言うよりも、空気のような存在か。
あの事がなければ、妻に花束を買おうなどと思うこともなかっただろう。
俺は通り過ぎる人の邪魔にならないように、また花を持ち変える。
すれ違い様にサラリーマンとおぼしき中年の男が、花と俺を交互に見ていった。
わかるよ、そんなクサイことやるような柄かって言いたいんだろ?
俺も今の姿を二年前の俺が見たら、鼻で笑うだろう。
キザな事しやがって、自分の面を曇りのない鏡でよぉく見てみろってな。
恥ずかしい奴だと密かに馬鹿にしながら通り過ぎるに決まってる。
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