花束

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***** 昨夜、俺は仕事を終えて帰って来る妻を今か今かと待ち構えていた。 そわそわと時間ばかり気にして、そして玄関のドアがカチャリと音を立てたのを聞いて、それまで座っていたリビングの椅子からすくっと立ち上がっていた。 リビングのドアが開けられ、バッグを下げたままの妻が俺を見て少々驚いた顔をした。 それはそうだろう。 テレビを見たまま「おかえり」というのが常なのが、何もしないでしかも座っても居られずに出迎えたのだから。 本当はそういうことも改めようと思っているのだが、身にしみ込んだ習慣というのはなかなか変えられない。 「……なに?」 目を丸くした妻が問う。 久しぶりにじっくり見た妻は玄関に飾られている結婚式の写真より疲れた顔をしているが、どういう訳か出会った頃のように俺は心が浮き足だっていた。 会えて嬉しいなんて、そんな感情忘れてたな……心の声に苦笑しながら妻に「お帰り、ちょっと座ってくれよ」と自分の向かい側の席を差した。 怪訝顔の妻は持っていた大き目のビジネスバッグを足元に置いた。 そして、俺の顔を眉を寄せたまま見つめつつ椅子に静かに座る。 俺ももう一度椅子へを腰を下ろしていった。
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