プロローグ

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   千葉市花見川区にある、とある集合住宅の一階。その中の一室で、家庭用電話機が電子音を響かせる。  家主は、織田 初音 七十歳。  彼女の子供たちは、とうに成人し独立している。夫の一郎は、四年前に他界し初音は一人暮らしをしていた。そんな彼女の家の固定電話が鳴るのは、決して珍しい事では無い。  近所の茶飲み友達から。  町内の老人会の仲間から。  息子の嫁の依子から。  それ以外にも、セールスや売り込みの電話も毎日のようにかかってくる。  昔のダイヤル式の黒電話と違い、初音の家の固定電話はデジタル式。本体上部に設置された液晶画面には、着信相手の電話番号が表示される。また、番号を登録してあれば、着信相手の名前までが表示されるタイプ。  初音本人は、そうした登録が出来ない為。息子の景一が帰省した際、それらの操作を行ってくれている。とはいえ、登録件数は三十件にも満たないが。
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