プロローグ

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  『いえ。お相手の方は、この場ので現金の引き渡しを条件としています。私の事務所の者が、直接受け取りに参りますので。どちらの銀行に行かれるのか、お教え願えますか』 「でしたら、本千葉銀行の新検見川支店に参ります」 『それでしたら、銀行近くに公園がありましたね。そちらに、事務所の者を向かわせますのでお急ぎ下さい』  初音は、弁護士に言われるまま。メモ用紙に受け渡し場所を記し、本日正午にと書き加えた。  彼女がメモする間。電話の向こうの弁護士は、初音の不安を煽るような事を言っては、次の瞬間には安心させるような事を言った。その為、初音の心の中には、純太を助けたい気持ちだけが溢れ出していた。  もはや、初音の中に疑念など少しも残っていなかった。  だがそこで、電話口の向こうで人物が入れ替わる。 『ばぁちゃん。何か、ゴメン』 「大丈夫。後は、ばぁちゃんに任せて安心してていいからね」
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