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『うん。何か親父とかには、こんな事を相談できなくてさ』
「景一や依子さんには、内緒にしておくからね。その辺の事も、安心していいからね」
『本当に、ゴメン……』
「いいから、いいから。それじゃ、ばぁちゃんは銀行に行かなきゃならないから。これで、電話を切るよ」
そう言って、電話は初音の方から切った。
だが初音は、すぐに出かける準備を始めず。家の中を物色し始めた。その行動には、意味があった。
銀行預金の金利は軒並み低く、彼女の銀行に対する不信感はどこまでも高かった。よって、現金を自宅に隠し持っているのである。
いわゆるタンス預金である。
初音にしてみれば、タンス預金をしている意識は無い。だが実際問題として、家の中からかき集めた金は四百万円にものぼった。
それでも、百万円は足りない。
初音としては、それが分かっていたからこそ。電話で、銀行へ行くと言ったのである。
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