機械の心

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 もちろん教室の中は真っ暗だ。  それなのに、電気の点いていない教室にモゾモゾと一人の女の子が、床に這いつくばっている。  私は若干の恐怖を覚えて、電気をつける。  暗かった室内は、一瞬で明かりに包まれる。  這いつくばっていたのは、やっぱり中島だった。  私は思わず「なにやってるの」と口に出してしまった。  その声に反応して、俯いたまま怯えたように肩をすくませる。  反応がないのに私は安堵して、自分のロッカーの中から、ジャージの入った袋を取り出す。 「私の……」  小さく切れそうな声で、中島が言葉を発する。  聞くだけで憂鬱になりそうな声。 「私の鞄、知らない?」  伏せられていた顔が、私に向けられる。  生気の無い能面のような顔。感情の一切は浮かんでおらず、私の事を認識しているかどうかすらも分からない。 揺れる視線、その瞳の焦点はあっておらず、ただ、ただ、暗い闇が支配している。  言葉が出ない。  喉が締め付けられるようだ。  ダメだ、ダメだ。 「知らないならいいよ」  中島は私に興味をなくしたのか、視線を床へと向ける。  その瞬間に呪いが解けたかのように、足が動き私は教室から飛び出た。  途中で机にぶつかって、大きい音が出てしまったけど、そんな事は関係ない。  中島の視線が背中に向けられているのは、痛いほど分かる。  けど、振り返って正気で居られる自信が、私にはない。
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