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線路の上の歩道橋を通って、学校への道を私は辿る。
通勤時間帯になると、1分置きに電車が通過するこの道を、白いイヤホンを耳につけたまま。
何も考えたくない。
この時間だけが私が私で居られる最後の時間。
誰かが耳元で喚く。愛の囁きとかキズナとか、形も意味も曖昧なものを。でも、それしか信じられない。嘘の方がイイ。
そんなものをBGMにプレイバック。
朝の光は眩しく私に突き刺さる。朝食の匂いと垂れ流しのTV。ニュースキャスターはいつもの暗い顔で囁く。
「また、誰かが死にました。」
煩い母親、新聞を捲る不機嫌な父親、弟がテーブルを汚し、ミルクが零れる。思わず舌打ちがでるほどの不快、不快。こんな人たちと同じ食卓につくなんて。
コーヒーだけでイイ。
他は要らない。
家族だなんて、結局血の繋がりしかないただの他人。
追いかけてきた声は無視。
急いで制服に着替える。ブラウス、スカート、誰も入らせないように鎧の中に閉じ込める。
思わず鏡に問いかける。
「私は誰?」
黒い髪、ああ、染めたい。無理、無理、願望だけ、叶えない、望むだけ。
今話題のリップを塗っても、あの雑誌に出てるモデルなんかにはなれない。
誰も求めない。
知ってる。
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