ある日

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つまらない、か。 確かに、この頃の私と比べたら無個性になったと思う。平凡な人生、それで幸せだ。そうに決まっている。でも…今目の前にあるのは、過去の自分?それとも…本当の自分?必死に言い訳をこねくり回しているのは、どんな自分なの?なぜ自分で自分を責めて、泣かせているの? 「…私だってこうはなりたくなかった」 無意識に口が開いた。目に涙が溜まってくるのが分かる。 「でも…こうするしかなかった」 その一言を言い終えたら、もう何も言える状態では無くなった。悲しいという感情がどっと押し寄せ、涙が止まらない。大人なくせに、目の前の子どもな自分よりもひどく、泣いている。 そっと、子供な自分が抱きついてきた。 私は抱き返す気力もなく、ただただ、下を向いて感情に突き動かされるままに、泣いた。 12歳の私は、好き嫌いがはっきりしていて、希望を持っていた。 その希望をもう一度持ちたいと、心のどこかでずっと、思っていたということだろうか。 だからこの歳の「私」が現れた。 …未来を変えるために過去を変えるんじゃない。今の自分を変えるために、過去を覗きにきたのだろうか。 本当の私は…何をしたい? 「ねぇ、大人な私。やってみてよ。ちゃんと勉強して怒られないよう頑張るからさ」 小さく、優しい声で子供な私は、私に言った。 今なら居心地の悪さを感じず、二人仲良く語り合えるような、そんな気がした。
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