ある日

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帰り道の風景。風は秋めいてきたけれども、さして何ら変わらない河川敷の道。 興味を惹く目新しいものも無く、足元を見る。新しいパンプスの中で悲鳴をあげる足に、頑張れと応援する。 履きなれた靴の方がいい。どんなに汚くて流行りでなくとも。昔の私はよくお母さんにそう言っていたようだ。新しい靴を買ってあげると言ったら怒ったのにねぇ、と今は新品を買う度に言われる。 「変わったんだろうな…大人になったってことかな」 ふぅ、と息を吐くように呟いた。 大学3年生になって、もう折り返しの季節。早く春になって欲しい。でもなぁ、4年生、か。 「香織はどうするの?就活」  ふと大学での友人の言葉が蘇る。彼女は黒いスーツをびしっと着て、黒髪を一つに結って講義に出ていた。 「早く行動した方が良いって先輩言ってたよ」  彼女はもう進むべき道が見えているようだった。私もやらないといけないんだろうな、まぁ明日からやろう、そして明日は永遠にこない。あははは、は、はは……。 「はー…。だめだこりゃ」  香織は頭をふるふると振った。セミロングの茶髪が揺れる。そろそろ黒にしないといけない。周りの髪色は黒一色になりつつある。  うん、今度の土日にやろう。とりあえず平日はバイトもあるし…… 「あのー、落としましたよ」 ふと、後ろから女の子の声がした。でもなんだか少し聞き覚えがあるような。 「すいません、ありがとうございま、す?」 振り返って声の主を見、心がヒヤッとした。 え。 「?どうかしましたか」 赤いランドセルを背負った二つ結びの女の子は、不思議そうに尋ねた。 え、ええええ?どういうこと?なんで????? 「私…?」
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