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住宅街の中の平凡な一軒家、とはいえ9年前の我が家はまだ、花が植わって整えられており綺麗だ。あぁこの頃はあれか、お母さんの中で花がブームだった時か。少し曖昧になってきた過去が思い出されてきた。
家に入れてもらい、2階にあるこぢんまりとした自分の部屋に入る。今は処分してしまった教科書類、ぬいぐるみ、玩具等々…見渡す限り思い出の品ばかりだ。懐かしい。
「靴どっか隠すところあるかな…ベッドの下かな」
昔の私がそう言い、私は自分の靴をビニール袋に入れベッドの下に置こうとした。そうそう、なんでもかんでもベッドの下の箱の中に隠してたんだよな、と少しニヤニヤしながらも、あるものを見つけ、体が固まった。
「?どうしたの?」
昔の私が近づいてくる。だめだ、気づかれたら。
「な、なんでもないよ」
宝物が入っている箱の上に置かれていた、あるものが見えたことを無かったことにしようと素早く目をそらし、靴を置いてベッドから離れる。
「そうだ、色々見てもいい?漫画とか、教科書も見るのも楽しそう!すっごい懐かしい」
「いいけど」
そそくさと勉強机に向かう私を訝しがりながら、昔の私はランドセルを床の上にどさっと置き、ベッドの下を覗き込んでひょいっとあるものを取り出した。
「よーし書こう。タイムスリップか…いいネタだよね。でも理由が分からないんだよね」
私はその言葉を聞いて、教科書を捲っていた手を止めた。
「ねぇ、どうやったら戻れるんだろうね。ずっとこっちにいる訳にもいかないだろうし、どうしたらいいんだろうね」
昔の私は、うーんと唸って考え込んでいた。まるでお話しを紡ぎ出そうとする作家のように。
「ねー、ねーってば!聞いてる?」
昔の私が近づき、私の腕を軽く掴んだ。
私は反射的にその手を振り払ってしまった。
「大丈夫!?顔色悪いよ」
昔の私はおっかなびっくりな顔をして私を見た。
ひどく嫌な気分だ、なんだってこんな気持ちに。思い出したくない、見たくもない。……何を?何で私は…変わってしまった?
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