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「なんで…なんで……?」
次第に声が弱弱しくなってきた。私はそっと右を向いて昔の私を見た。顔を真っ赤にしながら、ノートを握る右手は震え、目にはうっすら涙があった。
「なんで、未来の私がそんなことを言うの?…私だって分かってるよ、ヘタクソだって。でも書き続ければ上手くなれるって…」
言い過ぎたかもしれない。でも、未来を変えるために過去に戻された、未来を変えるチャンスを与えられたのだとしたら、現実を突きつけて違う道を歩むよう諭すこと、これがこのタイムスリップですべきことなのかもしれない。…ひどく不愉快だけど。こんな夢のないことを自分にするなんて。
「今ね、就職活動って言って、どの会社でどうやって働こうか、考えてるんだ。でも分からないの。だから今の時期から、他の職業を見ていて欲しいな」
「夢を諦めろって言いたいの…?」
「…他の、もっと現実的な夢の方が、いいよ」
涙があふれてきた昔の自分を見ながら、優しい口調でいった。まるで他人の言葉が自分の口から知らず知らずに出ているような、不思議な感覚がした。
しばらく無言が続いた。
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