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人だけだ。そして私が国王だ。だから、私が法律だ」
まるで独裁者のような口調で冗談交じりに言う。
「だから、私と正式に結婚してほしい」
榛色の目が本当に真剣な色になり、目を見張る。
「本当に?」
「ああ、隣国との折り合いがついてからになるが、本気で考えている。正式に法を定めてから、その時には君を伴侶として迎えたい」
胸がいっぱいで苦しくなる。
腕をまわしていた手に力を込め、レオの首筋に顔を埋める。涙が溢れてレオの首を濡らした。
「…………ゃう」
「…なに?」
野獣でなくなったレオは聞き取れなかった。
「昨日から…、幸せすぎて…死んじゃう」
涙に濡れた顔を覗かせてノアは言う。それを見たレオがノアの頬に唇をすり寄せて聞く。
「ノア、返事は?」
肯定の言葉しかないノアの唇にレオのそれが覆う。
出会った時とは違い、ふわりと暖かな風が吹き抜ける。美しい薔薇の広がる庭園で、色とりどりの花弁が祝福するように舞い上がった。辺りは薔薇の香りに包まれた。
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