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 その年初めて積もった雪はふんわりと辺り一面を覆い尽くし、雑多なあれこれを純白の毛布の下に隠した。彼はまっさらな雪の上に一人足跡をつけながら歩いた。空は妻の来訪を歓迎しているように快晴だった。雪に照り返されて乱反射するこの世界は真っ白だった。身体の中から鈍色の塊がすっぱり抜け落ちた後に見えた景色が白かったことに彼は安堵した。どんなことが起こってもあなたを愛している。妻は自分の言ったことを裏切らなかった。歩くのに疲れて彼は雪の上に倒れ伏した。冷たい小さな結晶が彼から容赦なく温度を奪っていく。  「僕は、君がいなければこんなに弱いんだ」  その呟きはほんの少し雪の結晶を溶かして消した。そして、もうそれ以上溶けることなく彼を優しく包みこんだ。
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