3人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
満員の電車内に詰め込まれた私。
これ以上潰すのはやめて、もう無理、と言う思いを、もう何度も更新しては、人がさらに詰め込まれる。
車両は駅と駅の途中で止まったまま、五分も動かない。朝の五分とは一時間の睡眠と等しいと、私は思う。
イヤホンから漏れる音楽。これ見よがしな咳の音。無理やりスマホを取り出せば、歪みが広がり、人々の声に出さない苛立ちが伝わる。
ストレスの缶詰の出来上がり。
人は皆、醜悪な感情を隠している、他人に知られてはいけない本性、だからこそ隠す訳だが、それは案外すぐ表に現れるものかもしれない。
「申し訳ありませんでした、間もなく運転再開いたします」
明らかに、今までとは違う口調のアナウンス。
今度こそ本当だろうと思った後、車両がゆっくりと進み出した。
通勤電車のトラブルに巻き込まれたものの、会社には開始30分前出勤を心掛けているので、ギリギリ間に合う時間に駅に着いた。
それでも、急く気持ちに駆り立てられ、私は小走りに前の人を抜き進んでいた。
何人目かを追い抜いた、その時だった。
最初のコメントを投稿しよう!