喜怒哀楽ぶくろ

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満員の電車内に詰め込まれた私。 これ以上潰すのはやめて、もう無理、と言う思いを、もう何度も更新しては、人がさらに詰め込まれる。 車両は駅と駅の途中で止まったまま、五分も動かない。朝の五分とは一時間の睡眠と等しいと、私は思う。 イヤホンから漏れる音楽。これ見よがしな咳の音。無理やりスマホを取り出せば、歪みが広がり、人々の声に出さない苛立ちが伝わる。 ストレスの缶詰の出来上がり。 人は皆、醜悪な感情を隠している、他人に知られてはいけない本性、だからこそ隠す訳だが、それは案外すぐ表に現れるものかもしれない。 「申し訳ありませんでした、間もなく運転再開いたします」 明らかに、今までとは違う口調のアナウンス。 今度こそ本当だろうと思った後、車両がゆっくりと進み出した。 通勤電車のトラブルに巻き込まれたものの、会社には開始30分前出勤を心掛けているので、ギリギリ間に合う時間に駅に着いた。 それでも、急く気持ちに駆り立てられ、私は小走りに前の人を抜き進んでいた。 何人目かを追い抜いた、その時だった。
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