気配

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気配

 それはとても明るい部屋だった。  がらんとした広い部屋の四方をモダンな模様のついた格子窓が囲んでいた。  部屋の中央には丸い机と足の細い椅子が置いてある。  窓の外からは、生い茂った木々の葉の間から陽の光が部屋中に差し込み、幻想的な雰囲気を醸し出していた。  ただ、他の部屋と違い、まだナダカンが健在だった時期にどうやって使われていたのかはわからなかった。  客室にしては広すぎるし、宴会場にしては狭すぎる。  部屋には机と椅子以外にはまったく何も見当たらなかった。  僕はまた違う場所か、と思ってその部屋を立ち去ろうとした……その時だった。  僕を取り囲む人の気配に微妙な変化が生じたような気がした。  これまでのような胡散臭い親密さではない。  僕自身、どこかで経験したことのあるような……。  僕は振り返って、もう一度部屋全体を見渡してみた。  改めて見てみると、それは僕のために用意された場所のように思えた。  もちろんそんなはずはない。  まだ生まれてもいなかった僕のために、昔の誰かが部屋を作るわけがないのだ。  だが、その部屋が何かしらの意味を持ち始めようとしていることは間違いなかった。  僕はゆっくりと、部屋の中を歩いてみた。  それは部屋の隅に、朽ち果ててささくれ立った床にカモフラージュするような形で置かれていた。
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