気配

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 そして、僕はふっと現実に引き戻された。  彼と過ごした、短い記憶が……奔流となって頭の中を駆け巡った。  僕は立っていられずに、その場に手をついて倒れこんだ。  オルゴールが僕の手を離れ、カシャンと音を立てて地面に落ちた。  オルゴールは一瞬だけ音程を狂わせて、ネジの限り彼の好きだった曲を演奏し続けた。  その演奏が続く間、僕はずっと彼との記憶の中にいた。  様々な出来事がフィルムのつなぎ合わせのようにフラッシュバックした。  それらは次第にパズルのピースのように繋がりを持ち始め、一つの記憶に集約されていった。
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