1人が本棚に入れています
本棚に追加
部屋を出る際に、隅の方にアナログレコードが立てかけてあることに気付いた。
こんなにこれ見よがしに置いてあるのに……部屋に入るとき、僕はまったく気がつかなかったのだ。
そのレコードのジャケットには、黄昏の夜空を駆ける一筋の流星が描かれていた。
ウェザー・リポートの『ミステリアス・トラヴェラー』。
それは明らかに、彼が置いていったものだった。
彼がそのバンドが好きだったことを、僕は初めて知った。
彼と僕の間には、もっとたくさんの話題があったのだ。
しかし、彼と僕の距離は……これ以上は縮まらない。
僕はようやく、彼を永遠に失ってしまったことを寂しく、辛く、悲しく思った。
息苦しいくらいに泣きながら、ジャケットと同じ黄昏時のホテルを後にして下山した。
最初のコメントを投稿しよう!