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「よし、できたぞ。アイ、運んでくれ」
「はい、わかりました」
待っていましたと言わんばかりに颯爽と動いてくれる。なんだか待っている間、ずっと落ち着きがなかったな。
「それじゃ、いただきます」
「い、いただきます」
久しぶりだ、誰かと一緒に夕飯を食べるのは。やっぱり、だれかと一緒に食べると気分が違う。
話をしようとアイのほうを見てみると、なぜかガッチガチに緊張しているのか動きがぎこちなかった。
「おい、アイ?」
「は、はい!」
やっぱり緊張していた。
「どうしたんだ? そんなに緊張して」
「い、いえ。あまりこういうのに慣れていなくて」
「こういうの?」
「はい、今まで夕食をご一緒したことがありませんでしたので」
「そうだったのか」
それで、そんなに緊張していたってわけか。
「そういえばアイって、前はどんなところに住んでいたんだ?」
「私が住んでいた場所ですか?」
「うん、そういえばさ、アイのことは何にも知らないなと思って」
実際、今のところ名前ぐらいしか知らないんだよな。
「私が住んでいたのは……」
そこまで言って、アイは暗い顔をしてうつむいてしまった。
「いや、言いたくないなら無理にいう必要はないからな」
これは僕が無神経だった。もともとアイは捨てられていたのだ。もともといた場所の環境はよくはないに決まっている。少し考えればわかったはずなのに。
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