余白に描く思い出

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 この調子だと、今日は遅刻することはないだろう。現在の時刻は午前六時。そう、ちゃんと起床することができたのだ! となればよかったのだが……  残念ながらそんなことはなく、寝ていないので起きているだけだ。そう、結局徹夜である。  さて、そろそろ準備しないと。  そう思い部屋からでて一回に向かう。すると、おいしそうなにおいがする。アイが作ってくれているのだろうか。  「おはよう、アイ」  「おはようご、じゃなくて、おはよう夏樹」  「お、おう」  そういえば、敬語はやめてくれって言ったな。昨日はあんなだったのにもう普通にしゃべれるようになったのか。  「なんか今日も朝ごはん作ってくれてありがとな」  「別にあなたのために作ったわけじゃないから!」   「え?」  今しゃべったのだれ? ここには僕とアイしかいないからどちらかが言ったのはわかる。でもアイはこんなしゃべり方をするとは思えない。  ああ。そうか寝ぼけているんだな。全く、徹夜するとろくなことがない。  「そうだ、もうすぐ服が届くと思うから、後でサイズ合うかきてみて」  そういいながら、目を覚ますためにコーヒーを飲む。  「そんな、私はこのままでも」  「いや、ぜひこれを着てみてくれ」  このまま、普通のTシャツだけでというのも申し訳ないし。  「あの、ありがとうご、じゃなくて、全然嬉しくなんかないんだからね」  「ゴハ!」  思わず、むせてしまった。どうやら聞き間違いじゃなかったらしい。  「あのー、もしかして何か間違っていたり……」  「うん、普通こんなしゃべり方しない」  「そう……なんですか」  とたんに落ち込んでしまったアイ。  「まあ、間違いは誰にでもあるし、気にするなよ」  なんで、こういう風になったかはすごい気になるけど  「あのさ、今度服買いに行きたいんだけど、一緒に来てもらっていい?」  「はい、大丈夫です。え、この服で十分ですよ」  結局、前の口調に戻すことにしたらしい。でも確かにこっちのほうがいいかもしれない。  「アイの服だから、僕が選ぶよりも一緒にいって選んでもらったほうがいいと思ってな。何か予定とかある?」  「いえ、ありませんが……」  「よし、じゃあ決まりだな」
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