余白に描く思い出

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 昔から機械をいじるのが好きだった。  親父が機械関係の仕事をやっているからかもしれない。  どのくらい好きかというと  「いいか、夏樹君。いくら成績が良くても遅刻ばかりではね……」  夜遅くまで機械いじりをして毎日のように、朝寝坊からの遅刻するくらい…かな。  困ったような表情をしながら先生は続ける。  「あのな、お前はもう高校生だ。そこらへんしっかりしてくれよ。分かったな」  「はい、すみませんでした」  「わかったならそれでいい。戻っていいぞ……おっと、ちょっと待てお前まだ進路希望調査を出してないだろう。そろそろ締め切りだからな。ちゃんと書けよ」  「はい、失礼しました」  教員室を後にする。  進路希望か……。何も考えてなかったな。どうするかな。    誰にでも自分にとっての思い出の場所とか、好きな場所っていうものはあると思う。  僕にとって、大事な場所。それはスクラップ場だ。  スクラップ場がなぜ僕の大事な場所か、その理由は僕の趣味に関係している。  僕の趣味、それは機械の修理だ。それも古い機械。  機械を修理してそれが動くようになると、機械が息を吹き返したように感じてうれしくなる。まあ、機械に命はないんだけど。  まあそういうわけで、スクラップ場が僕にとっての大事な場所で、必要なものがあれば学校帰りにここに立ち寄っている。  今日もここで探し物だ。  「しっかし、なかなか見つからないものだなあ」  思わず、口に出してしまったけれど、仕方がない。なかなかお目当ての部品が見つからないのだから。  かれこれ一時間探しているが見つからない。  しょうがない、少し奥まで行ってみるか。
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