余白に描く思い出

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「ただいま」  誰もいないとわかっていても、ついつい言ってしまう。誰かが答えてくれたらいいなみたいな願望があるからかもしれない。  そして、真っ先に部屋へと向かう。アンドロイドの状を確認するためだ。今日こそは何とか動かせるようにしたい。  扉を開けてアンドロイドを見る。するとそれは、上体を起こしていた。  その顔は窓に向けられていた。外を見ているのだろうか。  「あのー」  とりあえず声をかけてみた。  するとその声に反応してこちらを向き、そのままベッドから降りようとする。  「いや、いいよそのままで」  そういうと、動きを止めて、本当にそのままの姿勢になった。  「えーと」  とりあえず、話しかけてみたのはいいもののそこからどうしようか全く考えていなかった。  さて、何から聞いたらいいものなのか。とりあえず名前から聞いてみよう。  「えっと、君の名前は?」  すると、アンドロイドはすぐに  「アイです。私の名前はアイ。型式番号0010、個体識別コードはA021です」  「ああ、そうなんだ。あーっと、ちなみに僕の名前は菅 夏樹っていうんだ。よろしく」  「あの、松陽様はどちらにいらっしゃいますか?」   
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