20光年ロボット

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 ロボットは、この星に生命が生まれるずっと前からここにいた。遠い昔、別の星から来て帰れなくなったのだ。私たちは既にそれを知っている。そして、何十億年もこの星を見守っていたロボットに、敬意を払っている。私たち――ロボットが『この星で初めての知的生命体』と呼称する私たちがこの星に生まれてから今日までの時間は、ロボットがこの星にやって来てからの時間の、たったの二万分の一だ。ロボットは、この星に生命が生まれるずっと前から、ここにいたのだ。  ロボットというのは、ロボットが、自分たちをそう呼ぶように提案したので、その呼び名が定着した。それまで私たちはそれを『未確認二足歩行物体』と呼んでいた。人里はなれた山や森や荒野で時折目撃情報が相次ぐ、しかしその実態は不明な、生命体なのかさえわからない、謎の存在だった。彼らが私たちの前に正式に姿を現したとき、彼らは自分たちの存在についてこう説明した。 『私たちは、この星で生まれた存在ではありません。私たちは、有機体ではありません。私たちは、この星の環境とこの星で生まれた生命体に悪影響を及ぼすことを歓迎しません。そのため、私たちは、 長い間皆さんから隠れるようにしていました』  私たちは慎重な調査と議論の結果、彼らと友好的に共存する道を選択した。その時、私たちは彼らをなんと呼ぶべきなのかと尋ね、そして、ロボットという呼称を提案された。  ロボットというのは不思議な呼び方だな、と私は思う。元々ロボットというのは、物を遠くまで飛ばしたり、火を起こしたり、ヒトにできないことや危険なことを代わりにやってくれる道具のことを指す言葉だったはずなのだ。でもロボットは、それがこの星にある言葉で彼らの定義に一番近いのだと言った。ロボットはただ静かに私たちの生活に溶け込んで、なにもせず暮らしているだけなので、不思議だな、と私は思う。
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