20光年ロボット

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 例えば、ロボットがこの星で見てきたこと。海が出来たころ。微生物が生まれた頃。海底の初めての魚たち。大きな大きな恐竜たちの繁栄と滅亡。氷河期。そして新たな種々の生命体の分化と進化……。学校の授業で習ってきた星の歴史だったけど、ロボットから語られるそれらは、とてもリアルでわくわくした。ロボットは、それらを全部見てきたのだ。全部? と聞くと、時折、本体をスリープ状態にしたこともある、とロボットは答えた。そのまま活動するのには環境の変化が激しすぎたとき、あえて活動を停止して、安全な場所に隠れていたのだという。そのときの記録はリアルタイムではとっていない、と。だけれども、例えば氷河期が終わった頃、活動を再開したロボットたちは、またすぐに情報収集を開始した。だから、ほとんどのこの星の歴史は、リアルタイムに近い形で記録されている、とロボットは言う。 「どうしてそんな風に、この星の歴史を一生懸命記録しているの?」  何十億年も、ひたすら情報を集め続け、今もなおそれを行っているロボットが、私は不思議だった。  ロボットはいつもの穏やかな表情で、静かに、答えた。 『私たちは、それを目的に作られたからです』 「作られたって、どういうこと?」 『私たちは、ロボットです。私たちがかつていた星で、あなた方のような知的生命体が、多くのロボットを作りました。私たちは、彼らによって、系外惑星の探査を目的として作られました』  私はやっぱり、ロボットがロボットという名前で、作られたなんて言い方をするのが、不思議だと思った。ロボットは確かに二速歩行で、顔立ちも大きさや皮膚の質感も私たちとはだいぶ違うけれど、それでも確かに、意思や思考する力を持って複雑に自発的に動いているようにしか見えなかった。 「作られたなんて言い方、おかしいよ。ロボットは生きてるみたいに見える」 『そういう風に見えるように、作られたのです。私たちは、生命体ではありません。有機体ではありません。本体の九十八・五%以上が無機物で構成されています』 「生命体の定義は、有機物でできていることなの?」
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