ベタベタしたいお年頃

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 グラウンドから、金属バットがボールを打つ高い音が聞こえた。  ボールを追いかけるように聞こえてくる、枯れた野球部員の声。いろんな音が絡んだ後、短く歓声が上がる。ランニングホームラン? それともダブルプレイ? 今年の野球部は結構いいらしいから、いつもみたいに地区予選初戦敗退にはならずに済みそうだっていうけど、どうかな?  多分その隣では、大桑のいるラグビー部が、スクラムを組んでいるはずだ。フォワードだっけ? あいつのポジション。二年になったら、ナンバー8を目指すっていってたな。ナンバー8ってのは、エースで四番みたいなもんらしい。何度聞いても、俺ラグビーのルールが理解できないから、よくわかんないけど。  ここにいると……校舎の最上階の四階の生物室の準備室だけど……そんな汗臭い世界がどこか遠くに感じられる。音や声はよく聞こえるけど、窓から下をのぞきこまなければ、必死で動き回っている奴らの姿が見えないせいかな。  黄ばんだカーテンから射し込む光は、随分と西に傾いて、黄色からもっと濃い色になろうとしている。もう四時過ぎたかな……。 「深山君……」     
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