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低い声が、俺の名を呼んだ。それだけで、肌がぞくりと震える。期待に。でも、出てくる言葉は真逆だった。
「津田……マジで、勘弁……」
俺の言葉を拒否するように、小さな水音が響いた。
特殊教室ばかりが並ぶ生物室のあたりに用のある生徒はほとんどいない。ましてや今日は、文化系の部活の活動曜日じゃない。時々廊下を早足で横切る音が聞こえるが、それもごくたまにだ。まるで学校の中にぽっかりあいた、エアポケットのようなこの空間で、俺は友達で恋人で、それでもって俺より全然いい男に、ズボンを下ろされて……フェラされてた。意識を外の様子にでも向けていないと、変な声を上げそうだったから、必死だったのに、そんな俺の必死さを、奴はあっさりと無駄にしてくれる。
「深山君、いい……?」
俺の開いた足の間に頭をつっこんでいた男が顔を上げ、そう問いかける。濡れた唇が蜂蜜でも塗ったようにいやに光って見えて、男が今している行為をいやがおうにも俺に感じさせる。
「津田……もう、限界だから……。それ以上したら、マジで出るっ! おしまいっ!」
俺は裸の尻を乗せている机の端を、震えながら握りしめた。そうやって体に力を入れてないと、今すぐにでも津田の顔と口に欲望をぶちまけそうなくらい、俺は追いつめられていた。
「いいよ、出して」
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