ベタベタしたいお年頃

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 津田は、ゆっくりと俺から唇を離していった。津田の口から、濡れた俺自身が出てくる、っていうのが、いたたまれなかった。津田の不自然な口元に、俺はふらつく腰をどうにか倒さないようにしながら、準備室にある小さなシンクを指さす。 「早く吐いて来いよっ!」  でも津田は唇をきゅっと結んだまま、首を小さく左右に振った。 「気持ち悪いだろ? 早くぺってして、うがいして……」  俺は言葉を飲み込んだ。津田は口の中のものを、こともあろうに、ごくんとひと飲みにしたんだ。 「……津田、気持ち悪くないか?」  俺はおそるおそる聞いてみた。だって、嗅ぎ慣れた自分のそれのにおいは、どう考えても食欲をそそるものじゃないし。 「別に。深山君のだから、大丈夫」  口をあまり動かさないように言いながら、津田は小さく微笑んだ。  とんでもないことをしれっと言い放つ男は、一言でいえば、かなりな美形だった。     
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