序章

3/3
215人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
 魔界の玉座に相応しい悪魔は力のみで決まる。魔王候補としてマティアスとバルトは戦っていたのだ。 「おめでとう、マティアス。心から祝福するよ」  バルトはにこやかな表情でマティアスを祝った。  だが、そんなバルトをマティアスは胡散臭そうに見る。 「ふんっ、白々しいこと言うんじゃねぇよ。さっきまで戦ってた奴の台詞とは思えねぇな」 「そう? 本気なんだけどな~。長い付き合いなんだし、信じてくれてもいいんじゃない?」 「その締まりのないツラを何とかしてから言え」  マティアスは刺々しく言い返した。  二人は魔王候補として育てられた幼馴染みである。生まれた時から魔力がずば抜けて高かった二人は、魔王候補として幼少時に引き抜かれ、どちらかが次期魔王になる為に育てられたのだ。  だが、昔馴染みといっても二人の関係が良好だったことはない。魔王候補というライバル関係な事もあるが、そもそも真っ直ぐな気性のマティアスは本心が見えないバルトが信用できない。  それ以外にも、悪魔である彼らは強さを信じ、強さを追い求める性質である為、わざわざ交友を深めたりする事もない。あるのはどちらが強いか弱いか、どちらが上か下か、それのみである。 「マティアスよ。お前が次期魔王だ。魔界の玉座に座り、その力で次代の魔界を統治しろ」  魔王はマティアスに命じた。  その命令にマティアスは口角を吊り上げる。 「いいぜ。玉座ってのに興味はねぇが魔王になれば好き放題できるんだろ? なってやるよ」  マティアスの言葉に魔王は頷いた。  そして闘技場の悪魔達に告げる。 「天界は神の心によって統治されている。そして魔界は魔王の力によって統治される。皆、次期魔王であるマティアスの力に平伏すがいい!」
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!