第三章

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「あっ、もしかしてあれ……。船だ! マティアスの船だ!」  ふと、サシャは窓の外にマティアスの船を見つけた。マティアスが帰って来たのだ。 「マティアス帰ってきたんだ!」  サシャは思わず部屋を飛び出した。 「マティアス、マティアスっ」  五日振りのマティアスに高揚し、船が着陸した中庭へと向かった。  そして中庭でマティアスの姿を見つけるとサシャの表情がパッと輝く。 「マティアス、おかえり!」  サシャはマティアスに駆け寄り、嬉しさのあまり飛びついた。  勢いのまま飛びついたサシャをマティアスは危なげなく受け止める。 「ああ、今帰った」 「うん、おかえり! 待ってたよ!」  サシャはマティアスの腕にしがみ付いて満面の笑顔を浮かべる。  するとマティアスはサシャの頭にぽんっと手を置いた。  気に入っているという言葉通り、マティアスはサシャを拒まない。特別な存在にしてくれた訳ではないが、拒むほどではないという事だ。  その事にサシャは複雑な思いを覚えるが、それよりも今はマティアスへの恋心の方が大きかった。  こうしてサシャが懐いていると、船からクラウディオも降りてくる。 「おかえり!」  降りてきたクラウディオもサシャは笑顔で出迎えた。  クラウディオは軽く手を上げると、マティアスの横に並んで何気ない会話をする。その内容はサシャには分からない魔界の事で、サシャはマティアスの腕に抱き付いたまま黙って聞いている事しか出来ない。  サシャは、マティアスに信頼されているクラウディオやベルガを羨ましく思う。自分だって二人のようにマティアスの役に立ちたいのだ。 「さて、飯でも食うか。クラウディオも来るだろ?」 「ああ。そうさせてもらう」  これから食事をするというマティアスとクラウディオにサシャも慌てて言った。 「僕も行く!」 「テメェもか。それは構わねぇが、食べないんじゃなかったのか?」 「そうだけど、一緒にいたいんだ」  会話に混ざれなくても、せめて同じ場所にいたい。  天使のサシャにとって食卓の場など初めてだが、マティアスと同じ場所にいたいという気持ちが大きいのだ。 「こ、これが肉っ」  サシャは初めて見た食卓に驚いた。  大きなテーブルにはマティアスが大好物の肉料理が所狭しと並べられている。  肉を食べたことがないので料理名は知らないが、香ばしい匂いに鼻をくんくんさせて感激の溜息をついた。
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