恋歌

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恋歌

あなたは雪の華の様に つめたい風に頬を赤くして しろい息を吐いていた あなたは雪国の人であるから ここの冬は暖かいでしょう、と訊けば 「ここはとても寒い」と応えた あなたは黒曜石の様な髪を朔風に揺らし 煙水晶の様な眼をこちらに向ける 月石の様にしろい肌が寒さに赤くなっていたが、 あなたは黙ってわたしの歩むのを待った 薄ら降り積もった 都会の汚い雪に あなたの袴の裾は濡れたが 気のつかない様な素振りで、 あなたは和かな顔で歩いた あなたは雪の華のように 頬をほんのり赤くして しろい息を吐いていた 菓子でも買ってゆこうか、と云う やさしい声がしろい息に乗った
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